欧州連合(EU)は、60年以上にわたり万国博覧会で積極的な役割を果たし、イノベーション、持続可能性および文化交流に貢献してきました。1958年のブリュッセル万博から2020年のドバイ万博まで、各万博でEUは人類の進歩、協調そして国際的関与の在り方に関する自身のビジョンを世界に発信してきました。ここでは、過去の万博におけるEUの軌跡をたどり、各時代の課題や機会に応じて、その存在がどのように進化してきたかを紹介します。
1958年ブリュッセル万国博覧会(ベルギー・ブリュッセル)
1958年は、EUはその前身である欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)として、初めて万博に参加した年です。
将来EU諸機関の所在地となるベルギー・ブリュッセルで開催された1958年の万博において、ECSCは国際的な支持を得ることを目的に参加しました。同共同体の設立国がパリ条約に署名したのは、ブリュッセル万博からわずか7年前の1951年のことでした。同共同体のパビリオンには約600万人の来場者が訪れ、大きな成功を収めました。

シアトル 21世紀万国博覧会(米国・シアトル)
1962年、米国・シアトルで開催された万博において、9月23日〜27日の5日間が、後にEUとなる欧州経済共同体(EEC)の創設6カ国であるベルギー、ドイツ、フランス、ルクセンブルク、イタリアおよびオランダを祝う機会として設けられました。
EECパビリオンには、その指導者たちの演説映像がスクリーンに映し出され、備え付けの電話でその音声を聞くことができました。また、EECの歴史、目標および組織構造を紹介するさまざまな展示が行われ、来場者は文化、工学および産業関連の代表的なプロジェクトの模型を通して、同共同体について学ぶことができました。

1967年モントリオール万国博覧会(カナダ・モントリオール)
1967年モントリオール万国博覧会の欧州経済共同体(EEC)パビリオンは、欧州とカナダの建築家によって、欧州の多様性と連帯を表すダイヤモンド型に設計されました。また、欧州石炭鉄鋼共同体への敬意を表して鋼鉄で作られ、「6カ国は共生することを決めた」というテーマが掲げられました。
EECパビリオンの見どころは、ベルギー・フランドル地方のタペストリー、ドイツの中世都市マインツのパノラマ、グーテンベルク聖書、欧州のクラシックおよび現代音楽のレコードを集めたライブラリー、そして著名な欧州人の絵画など多岐にわたりました。

1970年日本万国博覧会(日本・大阪)
大阪では2025年だけではなく、1970年にも万博が開催されました。
欧州経済共同体(EEC)のパビリオンは、地上からの高さ24メートルの壮大な地下照明構造で、屋上庭園は絵付けされた陶器で飾られていました。このパビリオンは、第2次世界大戦の終結とEUの序開きまでの欧州の2000年にわたる歴史の発展を展示し、国際紛争に対する平和と団結の勝利を称えました。特に注目されたのは、パビリオンのテーマ「平和への想像力」を表現した8分間にわたる映像と音声によるプレゼンテーションで、2000枚もの写真が使用されました。

1992年セビリア万国博覧会(スペイン・セビリア)
1992年、欧州経済共同体(EEC)はセビリア万国博覧会に参加しましたが、これは万博へのEUの参加の歴史において特に重要な節目となりました。
同万博では初めて、全EEC加盟国が独自のパビリオンを設けました。EUのモットーである「多様性の中の統合」を示すべく、当時のEEC加盟12カ国(現在のEU加盟国数は27)のパビリオンは帆でつながれ、万博会場の「欧州通り」に建てられた、ドイツの建築家のカーステン・クレブス設計で加盟各国の国旗の色で彩られた高さ50メートルの円錐形のEECパビリオンがその中心に配置されました。その年のEEC全体のテーマは「ルネサンス期の欧州から、欧州のルネサンスへ」で、欧州のハイビジョンテレビの実演が特に注目を集めました。

2000年ハノーバー万国博覧会(ドイツ・ハノーバー)
「欧州の旅:新千年紀への挑戦」と題された2000年ハノーバー万国博覧会のEUパビリオンは、持続可能な開発と補助性の原則をテーマに、特に情報化時代の利点と弊害に焦点を当てました。
Lippsmeier + Partner が設計したEUパビリオンでは、立体的なタイムシャトル、巨大な回転式ユーロ硬貨型エレベーター、そして欧州の「音の地図」など、多彩な展示が行われました。また、パビリオンテーマに関連した会議、ワークショップおよび文化イベントが数多く開催されました。

2010年上海国際博覧会(中国・上海)
脳細胞の形を模した構造の2010年上海国際博覧会のEUパビリオンは加盟国ベルギーとの共同出展で、EUとベルギーの文明への貢献を紹介しました。
特に美食の分野では、パビリオン内に実際のチョコレート工場を設置し、ベルギーのチョコレート製造工程を来場者に見せるとともに、ベルギーワッフルやフライドポテトも提供しました。全体として、同パビリオンは約700万人の来場者を魅了しました。

2015年ミラノ国際博覧会(イタリア・ミラノ)
10年前、EUはイタリア・ミラノで開催された2015年ミラノ国際博覧会に出展しました。同万博のテーマである食料へのアクセスや他の地球規模の食料問題に呼応し、EUパビリオンでは、全加盟国共通の主食である「小麦」を展示の中心に据えました。
パビリオンの目玉は、EU製作の短編映画「ラ・スピガ・ドーロ(黄金の穂)」でした。農家のアレックスと研究者のシルヴィアの物語を通して、世界全体食料へのアクセスの改善には、国際協力と科学と農業の連携が不可欠であることを強調しました。

2020年ドバイ国際博覧会(アラブ首長国連邦・ドバイ)
2020年、EUはアラブ首長国連邦・ドバイで開催された2020年ドバイ国際博覧会に参加しました。この万博は、モビリティ、機会そして持続可能性という3つのサブテーマを中心に展開されました。
EUは、これらのサブテーマと万博の全体テーマである「心をつなぎ、未来を創る」に関連するEUの政策やプログラムに焦点を当てた講演やイベントを開催しました。具体的には、2050年までに完全にカーボンニュートラルな欧州を目指す「欧州グリーンディール」や、2030年までに欧州のデジタル移行を完了するための「デジタルの10年」、そして農業、包摂性と平等、イノベーション、経済などの分野におけるEUの取り組みが紹介されました。
